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建物は何mから高層建築?

「高層建築物」には、実は法律上の定義があります。 一方で、よく使われる「超高層建築物」には定義がありません。 定義があるのは、思っているのと逆の方かもしれません。

  • 種類法律上の境界
  • 出典デジタル庁
  • 最終確認2026年8月

答え

消防法は「高層建築物」を高さ31mを超える建築物と定めています。 第8条の2の括弧書きに、そのまま書かれています。

同じ31mという線は建築基準法にもあり、 31mをこえる建築物には非常用の昇降機を設けなければなりません。

一方、実務で超高層と呼ばれる60mの線は、 建築基準法 第20条第1項第1号で構造計算に大臣認定が必要になる高さです。 同じ60mで航空障害灯の設置義務も生じます。

ただし、「超高層建築物」という語を定義した条文はありません。 建築基準法にも消防法にも、この語は一度も出てきません。

定義が複数あります 目的によって基準が異なります。

境界の位置 一本の軸で見る

高層建築の境界 境界の位置を一本の軸の上に示した図。31mから高層建築物・非常用の昇降機が必要、60mから構造計算に大臣認定が必要・航空障害灯の設置義務。 31m 高層建築物・非常用の昇降機が必要 60m 構造計算に大臣認定が必要・航空障害灯の設置義務
左から右へ値が大きくなります。色が変わるところが境界です。

ほかの「境界」 法律上の定義と一般的な目安は別のものです

  • 法律上の境界

    高層建築物(消防法)

    31m から

    消防法 第8条の2

    条文の括弧書きに 「高層建築物(高さ三十一メートルを超える建築物をいう。)」とあります。

    これが法令上の「高層建築物」の定義です。 管理の権原が分かれている高層建築物では、 建物全体の防火管理を統括する統括防火管理者を定める義務が生じます。

  • 法律上の境界

    非常用の昇降機が必要(建築基準法)

    31m から

    建築基準法 第34条第2項

    「高さ三十一メートルをこえる建築物には、 非常用の昇降機を設けなければならない」と定められています。

    消防法の高層建築物と同じ31mの線です。 2つの法律が、それぞれ別の義務を同じ高さに置いています。

  • 法律上の境界

    構造計算に大臣認定が必要(建築基準法)

    60m から

    建築基準法 第20条第1項第1号

    高さが60mを超える建築物は、 政令で定める基準に従った構造計算で安全性が確かめられたものとして 国土交通大臣の認定を受けなければなりません。

    実務で「超高層」と呼ばれるのはこの線ですが、 条文はそう呼んでいません。定めているのは手続きの重さです。

  • 法律上の境界

    航空障害灯の設置義務(航空法)

    60m から

    航空法 第51条第1項

    地表または水面から60m以上の高さの物件の設置者は、 航空障害灯を設置しなければなりません。

    建築基準法の60mと数字は同じですが、条件が違います。 構造計算の方は「60mを超える」、 航空障害灯は「60m以上」です。ちょうど60mの建物では扱いが分かれます。

  • 法律上の境界

    超高層建築物

    数値の基準なし

    この語を定義した条文は存在しません。

    建築基準法と消防法の全文を検索しても、 「超高層」という語は一度も出てきません。 実務では建築基準法 第20条第1項第1号の60m超を指して使われますが、 条文がそう呼んでいるわけではありません。

  • 法律上の境界

    木造で構造計算が必要になる高さ

    16m から

    建築基準法 第20条第1項第2号

    高さ16mを超える木造の建築物は、構造計算による確認が必要になります。

  • 法律上の境界

    木造で構造計算が必要になる階数

    4 から

    建築基準法 第20条第1項第2号

    地階を除く階数が4以上の木造建築物も、同じ規定の対象です。

    高さと階数のどちらかに当てはまれば対象になります。 3階建てでも高さ16mを超えれば対象、 高さ16m以下でも4階建てなら対象、ということです。

  • 法律上の境界

    鉄筋コンクリート造で構造計算が必要になる高さ

    20m から

    建築基準法 第20条第1項第2号

    高さ20mを超える鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物。

    木造は16m、鉄筋コンクリート造は20m、鉄骨造は階数4以上と、 同じ条文の中で構造ごとに線が違います。 材料によって危険の現れ方が違うためです。

出典 定義の根拠

もう少しくわしく この数字の背景と、よくある誤解

定義があるのは「高層」の方

「超高層ビル」という言葉は日常的に使われますが、 その語を定義した条文はありません。 建築基準法と消防法の全文を検索しても一度も出てきません。

一方、あまり日常語として使われない「高層建築物」の方には、 消防法 第8条の2にはっきりと定義があります。高さ31m超です。

よく使う言葉ほど定義が無く、 使わない言葉ほど定義がある、という逆転が起きています。

31mの由来は条文に書かれていない

31mという中途半端な数字がどこから来たのかは、 消防法にも建築基準法にも書かれていません。

由来を説明した情報は世の中にいくつもありますが、 このページでは条文で確認できないことは書きません。 分かっているのは、消防法と建築基準法という別々の法律が、 防火管理と非常用昇降機という別々の義務を、 同じ31mという高さに置いているという事実です。

「超える」と「以上」で扱いが分かれる

同じ60mでも、条文の書き方が違います。

  • 建築基準法 第20条第1項第1号 … 高さが60mを超える建築物
  • 航空法 第51条第1項 … 60m以上の高さの物件

ちょうど60mの建物は、構造計算の特別な扱いは受けませんが、 航空障害灯は必要になります。

法令の数値は「以上」「超える」「未満」「以下」まで含めて1つの基準です。 数字だけを取り出すと、境界にいる建物の扱いを間違えます。

何階建てかでは決まらない

高層建築物の定義は高さ(m)であって、階数ではありません。

階の高さは用途によって大きく違います。 住宅なら1階あたり3m前後ですが、 オフィスや商業施設ではもっと高くなります。 同じ10階建てでも、高さは30mにも40mにもなりえます。

そのため「10階建て以上が高層」といった説明は、 法令上の区分とは対応していません。

構造によって線が違う

建築基準法 第20条第1項第2号は、 同じ条文の中で構造ごとに違う線を引いています。

  • 木造 … 地階を除く階数4以上、または高さ16m超
  • 鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造 … 高さ20m超
  • 鉄骨造 … 地階を除く階数4以上

高さで区切る構造と、階数で区切る構造があります。 単位そのものが揃っていないので、 「何mから」という問いに一つの答えを返せない部分でもあります。

読むときの注意

このページの数値は、定義そのものとして公表されているものです。 統計から算出した推計値ではありません。

定義は改定されることがあります。最終確認日をご確認のうえ、 重要な判断には出典の一次情報をあわせてご覧ください。